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「静かな退職」と男性更年期障害――“やる気が出ない”中年男性が増殖中?

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「静かな退職(Quiet Quitting)」――ここ最近、ビジネス誌やSNSなどで耳にするようになったこの言葉は、真面目な態度を保ちながらも、“必要最低限の仕事しかしない”という働き方を指します。退職届を出すわけでもなく、いわゆる「燃え尽き」ほど劇的でもない。しかし、じわじわと仕事への意欲が失われ、精神的にどこか職場から距離を置き、やがて内面から“消耗”していきます。

一方で、同年代の男性の間でひそかに増えていると言われるのが「男性更年期障害(LOH症候群)」です。更年期障害というと女性特有のものとイメージしがちですが、男性にも40代後半~50代でホルモンバランスの変化が訪れ、身体的・精神的な不調に悩まされることがある。具体的には、疲労感、性欲の低下、気分の落ち込み、集中力の低下、イライラなど、まさに仕事への意欲を低下させるような症状がそろってしまうのです。

では、なぜこの二つ――「静かな退職」と「男性更年期障害」――が、今まさに重なり合って話題に上がっているのでしょうか? その背景には、男性社会に根づいた“働き続けること”への幻想やプレッシャーの存在が見え隠れしています。

1. “静かな退職”を選ぶ理由

かつての日本企業では、「会社のために身を粉にして働くのが当たり前」という価値観が根強かったですよね。しかし昨今、過労死問題や長時間労働の是正といった社会的な流れの中で、「仕事ばかりの人生なんてごめんだ」「最低限の業務で十分だ」と考える層が増え始めてきたんです。
こうした人々は、あからさまに会社を辞めるというよりも、会社に居続けながら“仕事をセーブ”して自分を守ろうとします。あえて積極的にキャリアアップを狙わず、無理な残業を断り、周囲との軋轢を生まない範囲でパフォーマンスを抑える…この控えめな“ドロップアウト”こそが、「静かな退職」の正体です。

2. 男性更年期障害が重なるとき

そして、ちょうど働き盛りともされる40代・50代の男性が、健康診断や家族の問題、将来への不安などをきっかけに、ふと立ち止まることが増えています。さらに、身体的なホルモン変化が影響し、疲れやすくなったり集中力が落ちたりすると、「もうこれ以上無理をしたくない」「無駄にがんばる意味がわからない」と考え、“やる気”の減退に拍車がかかるのです。
いわゆる「働かざる者食うべからず」「男たるもの家族を養うべし」というプレッシャーが重くのしかかる一方、実際の身体は加齢とともに追い付かなくなる。そのギャップから生まれるストレスは、想像以上に大きいものです。それは家族に対しても仕事に対しても“負い目”につながり、さらにモチベーションが下がる悪循環に陥りやすい…。

3. 社内で隠れ“脱落”している中高年男性たち

企業内において、直属の上司や同僚との関係が良好であれば、まだ相談やサポートを受けられる場合もあります。しかし日本企業の多くは、働く男性のメンタルヘルスに対する理解がまだまだ不足しています。
「最近アイツ、覇気がないよな」と思われても、特に指摘もされず、また本人もアグレッシブに働きたいわけではありません。結果的に、【周囲からは見過ごされがちな抜け殻のような中年社員】が増加します。必要な業務は一通りこなし、問題は表面化しないため、上層部も「とりあえず放置」で済ませてしまうのです。その姿こそがまさに、「静かな退職」をしている人の典型例です。

4. 無言の“自己防衛”が後々もたらす代償

この「静かな退職」は、短期的には本人を過度なストレスや疲弊から守る効果があるかもしれません。しかし、長期的な視野で見れば、キャリアや収入の成長は見込めず、自己肯定感や役割意識の低下につながりかねません。
さらに、男性更年期障害の症状が進行すれば、身体的な不調が明確化し、うつ状態などの深刻なメンタルヘルス問題に移行するリスクもあります。家族関係の悪化や定年後の生きがい喪失などを考えると、将来的には静かどころか「極端な孤立」や「突発的な退職・転職」を招くかもしれないのです。

5. “家族も、会社も、そして自分も”救うために

では、この「静かな退職」と男性更年期障害の組み合わせに陥ったとき、どうすればいいのでしょうか。

  1. 医療機関での相談
    まずは症状が気になるなら、内科や泌尿器科、心療内科などで「男性更年期障害」の可能性を相談してみてください。必要に応じてホルモン値の測定や、専門的な治療を行うことができます。
  2. 職場の制度の活用
    リモートワークや時差勤務、フレックスタイム、有給休暇、時短勤務など柔軟な働き方が可能なのであれば遠慮なく利用してください。一時的に負担を減らせば、回復のきっかけになる場合もありますからね。
  3. 周囲とのコミュニケーション
    家族や信頼できる同僚・友人に状況を打ち明けるのは意外と大きな一歩です。男性は「弱音を吐けない」「言ったところで分かってもらえない」と思いがちですが、まわりの助力を得られれば、負担が軽くなることも多いですからね。
  4. 無理なく将来を設計する
    「キャリアアップ」が唯一の生き方ではありません。キャリアは「パラレルキャリア」もあれば、自ら選択する「キャリアダウン」もあります。しかし、完全にモチベーションを手放したまま、漫然と年齢を重ねるのはリスクが高いです。小さなスキル習得や、副業など新しい挑戦を検討してみることで、再び“社会との接点”を作り直す道が開けるかもしれません。

最後に

「静かな退職」を余儀なくされている中年男性の裏には、「やる気のない怠け者」というステレオタイプだけではなく、男性更年期障害による切実な身体・精神面の限界が隠れている場合があります。表面上は穏やかでも、その胸の内は「このまま頑張れるはずがない」という悲鳴に満ちているかもしれないのです。
男性社会が当然のように強要してきた「オトコは強くあるべき」という価値観は、そろそろ綻び始めています。「静かな退職」という現象は、その綻びが表面化したサインでもあるのだと思います。
会社としても、家族としても、そして本人としても、この「静かな退職」のサインを見過ごすことは大きな損失を招く可能性があります。刺激的に言うならば、これを「個人の甘え」や「気合不足」で済ませるか、“自分たちの働き方と生き方を再構築するチャンス”と捉えるかで、これからの人生や組織の行方は大きく分かれるでしょう。
あなた自身、あるいはあなたの身近にいる人が、「何だか最近、静かに心が折れてる気がする」「なんとなく仕事に気乗りしなくなった」という兆しがあるならば、どうか“自分の内面”に目を向けてほしいと思います。「静かな退職」と男性更年期障害は、どちらも新たな行動を起こすサイン――その危機感こそが、人生を立て直す第一歩になるのです。

男性更年期障害の克服に必要なのは「ひとりじゃない」と思えること

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ABOUT ME
タツヤ
タツヤ
男性更年期障害予防改善アドバイザー
1971年生まれ。
2010年頃から動悸、めまい、発汗、倦怠感などの症状に悩まされる。
様々な病院で検査を受けるも原因が分からず『診断難民』状態に。
その間、体調は悪化するばかり。
2019年頃から体調不良(不定愁訴)が顕著に現れる。
2022年11月ホルモン検査の結果、男性更年期障害の診断を受ける。
以降、テストステロン補充療法を中心に治療を続け、合わせてテストステロンをアップさせるための生活習慣の改善に取り組み、2023年11月時点、テストステロン値も正常になり、男性更年期障害の症状は改善する。
現在は、自身の経験を活かし、SNS(X【旧Twitter】)やblog、同じ悩みを持つ方々によるコミュニティ、さらには各種メディア出演など通じて、男性更年期障害を中心としたメンズヘルスに関する情報を発信している。

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■ぶんか社 comicタント(vol.50) 漫画(熊田プウ助『中年肉体百科』)の原作協力
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ほか

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■男性相談ネットワーク会員(一般社団法人日本男性相談フォーラム)

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