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働かないのではなく、働けない?「働けないおじさん」と男性更年期障害

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どうもです。男性更年期障害予防改善アドバイザーのタツヤです。
今回は「働けないおじさん」についてお話します。周囲から「働かないおじさん」と揶揄されている人でも、実は好きでサボっているわけではなく “働きたくても働けない” 状態かもしれません。その大きな原因の一つが 男性更年期障害 です。男性更年期障害の症状を放置するとどうなるのか?仕事のパフォーマンス低下や人間関係の悪化、モチベーションの喪失につながる「更年期ロス」とは何なのか?対策とともに掘り下げていきましょう。

「働かない」のではなく「働けない」—その違いとは?

職場でよく問題視される「働かないおじさん」。実際には言葉通りの“不真面目で本当に働かない人”はそれほど多くないと言われます 。

多くの場合、本人は真面目に頑張っているのに成果が出ず、周囲からやる気がないように見えてしまっているのです。つまり、「働かない」のではなく「働けない」のです 。本人に悪意や怠惰のつもりはなく、会社側も対応に苦慮するケースが少なくありません。

では、なぜ「働けない」のか。

その背景の一つに 男性更年期障害 が潜んでいることがあります。男性更年期障害(LOH症候群)は加齢による男性ホルモン(テストステロン)の低下で起こる様々な不調です 。40代以降の男性なら誰にでも起こり得るもので、体のほてりや発汗、疲労感、不眠といった身体症状から、イライラや落ち込み、意欲低下など精神面まで影響します 。現在、40歳以上男性の4~5人に1人が男性更年期障害の可能性があるとも言われます。しかしながら男性更年期への認知度は低く、厚労省の調査(2022年)では8割以上の男性が「男性にも更年期の不調があることをよく知らない」と回答しています。その結果、不調に気づかず適切な治療や対策を受けていない人も多いのです。

更年期ロスがもたらす仕事の影響

男性更年期障害による心身の不調を抱えたまま働けば、当然ながら仕事への悪影響が出ます。

まず職場で顕著なのが プレゼンティーイズム(Presenteeism) です。

これは体調不良や不調がありながら出勤している状態で、生産性が大きく低下していることを指します。たとえば「出社はしているが、集中力が続かずミスが増える」「やる気が出ず指示待ちになってしまう」などの状態です。

一方、症状が重くなれば アブセンティーイズム(Absenteeism)、すなわち欠勤や長期休職に至ることもあります。

実際、男性更年期の症状による不調で「仕事のパフォーマンスが通常の63.3%まで低下した」との調査結果もあります。具体的な影響として、「やる気が起きない」と感じる人が56.4%、「集中できない」人が38.3%、「眠くて仕方ない」人が33.2%にのぼりました。さらに症状が原因で「転職や休職、異動、昇進辞退」を考えた人も多く、実際に離職や休職に踏み切ったケースも少なくありません。

こうしたパフォーマンス低下は周囲にも影響を及ぼします。仕事のミスが増えれば同僚のフォローが必要になり、チーム全体の生産性に響きます。また、更年期のイライラや不安感から人に当たってしまい、職場の人間関係がギクシャクすることもあります。部下や同僚とのコミュニケーションがうまく取れず孤立してしまう人もいるでしょう。その結果さらに職場で肩身が狭くなり、意欲を失うという悪循環に陥りがちです。まさに更年期症状によって仕事に支障が出る「更年期ロス」の状態です)。厚労省や経産省もこの問題を重要視しており、男性更年期による生産性低下や欠勤がもたらす経済的損失は年間約1.2兆円にのぼるとの試算もあります。本人だけでなく企業や社会にとっても無視できない損失と言えるでしょう。

体験談:更年期ロスに陥った男性のリアルな声

実際に、更年期障害による不調で「働けないおじさん」状態に陥った男性たちの声を紹介します。

  • プレゼンティーイズムの例: 45歳のAさん(仮名)は、以前は責任感が強くバリバリ働いていた営業職でした。しかし40代半ばから原因不明の倦怠感や集中力の低下に悩まされるように。毎日出勤はするものの、頭がボーッとして仕事に集中できず、ケアレスミスが急増 。上司から叱責されることが増え、「サボっているのか?」と誤解されてしまいました。本人は真面目にやっているつもりなのに成果が出ず、自信を喪失。「自分はもうダメなのかもしれない」と塞ぎ込みがちになり、さらにモチベーションが下がる悪循環に陥りました。後に受診してテストステロン値の低下が判明し、男性更年期障害による不調だったことがわかったそうです。
  • アブセンティーイズムの例: 50歳のBさん(仮名)は管理職として多忙な日々を送っていましたが、ある時期から強い抑うつ症状が出現。出社前になると動悸がし、不安で布団から起き上がれなくなりました。「会社に行きたくない」と感じる日が続き、ついに更年期うつによる休職を余儀なくされました。休職中は「自分は怠けているのでは」と自責の念に駆られましたが、実は男性更年期が原因の一つだったのです。治療と休養により少しずつ回復し、職場復帰できたものの、ブランクによるキャリアの停滞は避けられませんでした。
  • 家庭や周囲への影響: 上記のAさん・Bさんともに、家庭では些細なことでイライラして怒りっぽくなったり、逆にふさぎ込んで会話が減ったりといった変化が出ていました。Aさんの奥様は「まるで別人のよう」と戸惑い、Bさんのご家族も当初は怠け癖や甘えではと誤解していたそうです。しかし男性更年期障害の知識を知ることでようやく状況を理解し、サポートに回ることができたとのことです。「見えない敵」とも言える更年期障害は、本人だけでなく周囲の人間関係にも影を落としてしまうのです。

更年期ロスを防ぐための対策

では、「働けないおじさん」にならないために、男性更年期障害への対策・予防法をまとめます。

1. ホルモンバランスを整える生活習慣: 基本は生活習慣の見直しです。男性ホルモンの低下はストレスや生活習慣の影響も受けます 。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけましょう。特に睡眠不足や過労はテストステロン減少を加速させると言われます。運動習慣はホルモン分泌を促し、気分転換にも有効です。また、アルコールの過剰摂取や喫煙はホルモンに悪影響を及ぼす可能性があるため控えめにしましょう。

2. 仕事の仕方を見直す: 40代以降は若い頃と同じ働き方では無理が出てきます。自分のペースで働き方を調整することも大切です。例えば、スケジュール管理を見直して無理な締め切りや残業を減らす、適度に休憩を入れて集中力を保つ、業務をチームで分担して抱え込みすぎない、といった工夫が有効です。また、ストレスフルな環境にいる場合は配置転換や在宅勤務の活用など、働きやすい環境づくりを上司や人事に相談してみるのもよいでしょう。周囲に自身の体調をオープンにすることで理解が得られれば、業務量や役割の調整も可能になるかもしれません。

3. 必要なら医療機関へ相談: 症状がつらい場合は我慢せず専門家に相談しましょう。男性更年期障害は 泌尿器科や男性更年期外来 などで診断・治療が受けられます。血中のテストステロン値を検査し、低ければホルモン補充療法(HRT)を行うことも可能です 。具体的には、医師の判断でテストステロンの注射や塗り薬などの処方が行われます(一定の条件を満たせば保険適用も可能)。ホルモン療法に抵抗がある場合でも、漢方薬やビタミン剤の処方、生活指導などで症状改善を図るケースもあります。また、更年期に伴ううつ症状が強い場合は心療内科で抗うつ薬やカウンセリングを受けることも検討しましょう。「年だから仕方ない」と諦める必要はありません。適切な治療で症状は和らぎ、再び元気に働けるようになる可能性があります。

まとめ

「働かないおじさん」とレッテルを貼られていた人が、実は男性更年期障害の影響で「働けないおじさん」になっていただけかもしれません。中高年期の男性に訪れるホルモン低下は、放置すれば仕事のパフォーマンス低下、人間関係の悪化、モチベーション喪失といった深刻な影響を及ぼします。しかし裏を返せば、原因がわかれば対策も取れるということです。早めに気づいてケアを始めれば、「もうダメだ…」と諦める必要はありません。生活習慣の改善や必要な治療で、更年期の不調を乗り越えて再び生き生きと働くことができるはずです。

まずは自分の不調に目を向け、適切な対策を講じましょう。

もし自分が当事者でなくても、周囲に「もしかして…?」と思う人がいたらぜひ男性更年期障害の可能性を教えてあげてください。職場でも家庭でも、お互いの理解とサポートが何よりの助けになります。今日からできる小さな一歩が、将来の“大きなロス”を防ぐことにつながるでしょう。

男性更年期障害の克服に必要なのは「ひとりじゃない」と思えること

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ABOUT ME
タツヤ
タツヤ
男性更年期障害予防改善アドバイザー
1971年生まれ。
2010年頃から動悸、めまい、発汗、倦怠感などの症状に悩まされる。
様々な病院で検査を受けるも原因が分からず『診断難民』状態に。
その間、体調は悪化するばかり。
2019年頃から体調不良(不定愁訴)が顕著に現れる。
2022年11月ホルモン検査の結果、男性更年期障害の診断を受ける。
以降、テストステロン補充療法を中心に治療を続け、合わせてテストステロンをアップさせるための生活習慣の改善に取り組み、2023年11月時点、テストステロン値も正常になり、男性更年期障害の症状は改善する。
現在は、自身の経験を活かし、SNS(X【旧Twitter】)やblog、同じ悩みを持つ方々によるコミュニティ、さらには各種メディア出演など通じて、男性更年期障害を中心としたメンズヘルスに関する情報を発信している。

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